第8章

クリスタル湖の離宮で迎えた四日目の朝。母であるヴィクトリア妃の宮殿へ挨拶に向かおうとしたところ、廊下で侍女たちがひそひそと噂話をしているのが聞こえてきた。国王陛下が三日続けて、母上の元に泊まられたというのだ。

これは近年、まったく聞いたこともない出来事だった。

「ですが昨夜、ソフィ・サンダース妃が夜中に体調を崩されたそうで……。国王陛下は様子を見に行かれたきり、お戻りにならなかったとか」

年長の侍女の一人が、どこか揶揄するような口調で溜め息をついた。

私は心の中で小さく笑みを浮かべ、王妃宮へと歩みを進めた。ソフィ妃の「病」が、いつも絶妙なタイミングで発症するのは、宮中ではもは...

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